骨粗しょう症は特に女性に多く、加齢や遺伝、生活習慣などが原因で発症する病気です。骨粗しょう症には、医師の薬物投与による「薬物療法」の他にも、普段の生活のなかで行う「運動療法」「食事療法」といった主に3つの治療法があります。
ここでは、その3つの治療法についてそれぞれ詳しく解説しているので、骨粗しょう症で悩んでいる方や予備軍と思われる方はぜひ参考にしてください。
近年、骨粗しょう症に対応する治療薬が次々に開発され、患者の症状や状態に合わせた治療が行えるようになってきています。
老化によって衰えた骨を若い頃のように元に戻すことはできませんが、早期に治療を行えば骨粗しょう症による骨折はかなり防げるようになりました。
現在、骨粗しょう症の治療で使用される薬には大きく分けて3つの種類があります。
・骨の吸収を抑制する薬
薬品名 | 作用 |
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女性ホルモン剤(エストロゲン) | 女性ホルモンの分泌が減少した閉経期の女性が対象。骨密度の上昇または維持効果を持つ。 |
カルシトニン | 骨密度の減少を抑制するほか、鎮痛作用も併せ持つため背中や腰の痛みを和らげてくれる。 |
ビスフォスフォネート | 骨に沈着し、破骨細胞の働きを抑制する。骨量の増加・骨折予防効果を持つ。 |
イプリフラボン | 骨密度の低下を抑える |
SERM(ラロキシフェン、バゼドキシフェン) | 骨密度の上昇効果、骨折抑制効果など、女性ホルモン剤と同様の働きを持つ。 |
デノスマブ | 破骨細胞に働きかけ骨吸収を抑制する。 |
・骨の形成に働きかける薬
薬品名 | 作用 |
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ビタミンK2 | 骨形成を促進し、骨密度の低下を抑制する。 |
テリパラチド(副甲状腺ホルモン) | 骨芽細胞への分化を促進、アポトーシス(細胞死)を抑制することで骨形成を促進する働きを持つ。 |
・吸収と形成を調節する薬
薬品名 | 作用 |
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活性型ビタミンD3 | 食事で摂取したカルシウムの小腸からの吸収を促進させ骨量の減少を抑えるほか、骨形成と骨吸収のバランスも整える。 |
カルシウム剤 | 食事からカルシウムが十分摂取できない場合に用いる。継続的に服用することで骨量の減少を抑える |
このように、骨粗しょう症の治療における薬は数多く存在します。
それぞれの種類によって服用するタイミングや量は異なるため、服用する際は必ず医師の指示に従うようにしてください。
背中や腰が痛む、身長が縮んでいたなどの異変がみられた方は、
骨粗しょう症の疑いがあるため、まずは病院へ行って医師の診察のもと検査を受けるようにしましょう。
骨粗しょう症の検査は主に「骨密度検査」「脊椎レントゲン検査」「血液・尿検査」の3つです。
■骨密度検査
骨の強さを示す骨密度を測る検査で、骨の中にカルシウムなどのミネラルがどのくらいあるかを測定します。骨密度検査には「DXA法」「超音波法」「MD法」といった方法があり、それぞれで用途や検査方法が異なります。
2種類のX線を使用して測定する方法。全身の骨を測ることができ、一般的に腰の骨である腰椎や脚のつけ根部分にある大腿骨近位部の骨密度を正確に測定します。
かかとやすねの骨に超音波をあてて測定する方法。X線を使用しないため、妊娠中の方でも安心して測定できます。
X線を使用して手の骨とアルミニウム板を同時に撮影し、骨とアルミニウムの濃度を比較することで測定する方法。街の診療所などで容易に計測できます。
■脊椎レントゲン検査
胸椎や腰椎など背骨部分のX線写真を撮影し、骨折または骨が変形していないかなどを確認します。骨粗しょう症とその他の病気を区別するうえでも必要な検査です。
■血液・尿検査
骨代謝マーカーという検査を用いて骨の新陳代謝速度を調べます。
また、骨粗しょう症以外の病気にかかっていないかを検査することも可能です。骨代謝マーカーは血液と尿の検査によって測定し、数値が高い人は骨密度の低下速度が平均に比べ速いため、骨折の危険性が高くなります。
骨粗しょう症による骨折を防ぐには、早期発見と適切な治療が大切です。リスクが高くなる前に対処できるよう、特に40歳以上の女性は定期的に検査を受けるようにしましょう。
骨粗しょう症と大きく関係する骨密度を高めるには、適度な運動も大切です。運動によって骨に負荷を与えると、微量の電磁場が骨に伝わり、骨の成長や修復を促進すると言われています。さらに、体を動かすと骨の血流も良くなるため、骨芽細胞の働きが活発化し骨密度を高めることもできます。
骨は負荷をかければかけるほど強度を増していきますが、普段運動していない方やスポーツが苦手という方が急にハードな運動をすると怪我をする恐れがあるので注意が必要です。
そういった方はまず、軽めのウォーキングやサイクリングなどで徐々に身体を動かすところから始めてください。
ウォーキングは1日8,000歩を週3回程度行うことを目安にすると良いでしょう。
運動によって筋力をつければ、転倒予防にも繋がるため骨折といった怪我のリスクを減らすこともできます。
しかし無理な運動は逆に体を痛めてしまうので、自分の体調に合わせて無理なく続けることを心がけるようにしましょう。
骨粗しょう症の改善、いわゆる骨を強化するうえでまず初めに重要となるのが食生活です。
骨を強くするためには、様々な栄養素をバランス良く摂る必要があります。代表的な栄養素としてカルシウムがありますが、他にもビタミンDやビタミンK、シリカ(ケイ素)といった栄養素も骨粗しょう症の予防・改善に効果的です。積極的に摂るようにしましょう。
それぞれの栄養素を含む食品をまとめてみたので、チェックしてください。
カルシウム | 乳製品(牛乳、ヨーグルト)、小魚、大豆製品(豆腐、納豆)、ひじき…など |
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ビタミンD | サケ、サンマ、しいたけ、きくらげ…など |
ビタミンK | パセリ、納豆、大葉、ほうれん草、小松菜…など |
シリカ(ケイ素) | からす麦、じゃがいも、青のり、とうもろこし…など |
なかでもシリカ(ケイ素)は近年、カルシウムよりも骨を強くする可能性があるとして注目されている栄養素です。
アメリカとイギリスが共同で行った「フラミンガム子孫研究」においても、カルシウムよりシリカ(ケイ素)のほうが骨密度の上昇に強い影響を与えると考えられています。
シリカ(ケイ素)は今やミネラルウォーターとしても販売されているので手軽に摂取することも可能。
もちろん、シリカ(ケイ素)だけ摂取すれば良いというわけではなく、ビタミンDやビタミンKなども併せてバランス良く摂ることが大切です。基本的にバランスの良い食生活を心がけていれば、特に避けるべき食品はありません。しかし、利尿作用があるカフェインやアルコールを過剰に摂取すると、尿と一緒にカルシウムも排出してしまい、骨に必要な栄養素が不足してしまうので注意が必要です。
食生活は骨粗しょう症を予防するうえでも大切な要素なので、普段から栄養素を考えたバランスの良い食事を心がけるようにしましょう。